[TRPG]TRPGの上達
※この記事では「デザイン」を「ゲームをプレイする」という意味合いで用います。
TRPGが唯一、ゲームを「デザイン」することができるとして、TRPGの独自性としている論考が見られますが、それは誤りです。
その理由を説明します。
僕は、へっぽこのチェス・プレイヤーでもありまして、チェス関係の本も読み漁っています。そのなかに、こんな本があります。
チェスの技術は「メモリー」ではない。
自分で「デザイン」する、チェスの考え方教えます。
と、表紙には、あります。
ゆえに、「メモリー」と「デザイン」を用いて、ゲームに遊ぶことは、はっきりと、他のゲーム(チェスほか)にも存在する考え方なのです。
ナイトを何手で、あるマスに移動させられるか、これは完全に「メモリー」です。
これを用いてチェスのプレイ中にまず再現はできません。相手の利きマスに入ると取られてしまうからです。そこで、変則的な有効な動きを考慮します。ここが、「デザイン」です。
では、TRPG「に」遊ぶことにおいて、「メモリー」とは、端的に何かといえば、「遊びの現象学」にある通り、
ごっこ遊びは型にはまった動作系列のワン・セット、図式化された行動パターンを、いわばこどもの共有財として固定している。キャラクターに動機付けられて典型化された一定のパターンを組み立てて遊ぶ。キャラクターのタイプを示してさえいれば、この遊びのルールとしては十分であって、それ以上の模倣や造形や表現は必要がない。 |
の、部分であり、これら「メモリー」はGMの登場させるステレオ・タイプなNPCに如実にあらわれます。もちろん、PLのPCのロールプレイにも掛け合いのためには必須です。
TRPGが「メモリー」を必要とする部分は、これら「動作系列のワン・セット、図式化された行動パターン」の部分で、TRPGシステムの取り扱う舞台世界のジャンル「に」遊ぶ振舞い方に相当します。
ですから、TRPGを楽しむためには、小説・映画・漫画・アニメ・コンピューターゲームなどに多く触れておくことが役に立つと思います。
実際、そのような「引き出し」つまり、「メモリー」が多い人とTRPGを楽しむと「楽しめた」のは、ここに拠りかかるところが大きいのです。
その理由は単純で、「メモリー」を全く欠いての「デザイン(ここでいうゲームをプレイする)」は不可能だからだと思います。
このとき、「メモリー」という「動作系列のワン・セット、図式化された行動パターン」という規定性の遊隙が生じるために、TRPGという解釈学論的な遊びが充分に反映される余地(遊隙)が、不可欠です。
ゲーム理論構成の導入
ゲーム理論ブックガイド-和書
TRPGにおいて、ゲーム理論の信奉者が、見失いやすいことは一つに、競合している他者との利益分配がゲーム理論的な意味で合理的であることを「美しい」=「Beautiful」=「Art」として、連想していることです。
もともと、古代ギリシャ語のアルス(派生語アート)とテクノー(派生語テクニクス)は、ほぼ同じ意味合いで用いられ、「アート」「オブジェ」は「人工物」「ブツ」という意味合いです。
日本語の「芸術=Art」は、もろにジャパニーズ・イングリッシュです。
僕は、ビルマ人と歌舞伎町で働いていたことがあり、自分で稼いだお金で学生をしていると話したときに、「プリティー(カッコイイ)」「スマート(冴えている)」と言われました。ジャパニーズ・イングリッシュは、これだけ変なのです。
意志決定(Decision Making)という規定性(これが、TRPG論考で言うゲーム性ではないでしょうか)をTRPGの遊隙に持ち込むことで、新たな遊隙が生じます。
この組み込みはシステム、シナリオ、ロールプレイにも、行われます。
この新たなゲーム理論上の規定性においては単純に適用してはならない。この遊隙が生じるためには、TRPGという解釈学論的な遊びが充分に反映される余地(遊隙)が、不可欠です。
まず、TRPGは解釈学論的な遊びで、遊戯関係で営まれるコミュニケーションであり、美的観照とは異なる、存在論的了解内容に「TRPGに遊んで楽しむのだ」という自覚をもった、遊び手のみが、僥倖において参加できるものとして、「TRPG体験」を得ます。
TRPG、は解釈学論的な遊びで遊戯関係に遊動する限り、ここで述べているゲーム性と、相即しあっているときに、アートと呼び得る。
その目標とする造形が、楽しみ得た「TRPG体験」を目指すとして、僕があげるのは物語性です。
ゲーム性とは何か
以前に書いた記事のRP/GのG=0では、RPGが成り立たない、とした、この中核が、ここで言うG=ゲーム性ではありません。
僕の考えるところのGは「遊びを遊びたらしめる規定性と遊隙に、自らが存在論的了解内容としあったコミュニーションの遊動関係」ではないか、と分析します。
つまり、もっと分かり易くくだけて書くと、時計細工職人の精密な力を発揮するハンマーで、大工で用いる釘は打てないでしょう。
そのハンマーは、精密な力を発揮するのだと、時計職人が、存在論的了解内容をもっているといいます。
これと同じように、遊び手が存在論的了解内容として、「TRPG(に)遊ぶこと」、「遊ぶこととは、遊びを遊びたらしめる規定性と遊隙に自分をおき、遊び手とTRPGとしてのコミュニケーション関係に位置づけること」をもっていること、これがRP/GのGです。
このGが成り立たなければRPGは絶対に成り立ちえません。
そして、シーソーのように遊動関係であるからこそ、遊び手にはバランスをとることは、決して忘れてはなりません。性別や趣味、年齢、職業(クリエイター系だったり、人権運動家だったり)など、配慮が大切です。
万人が合理性を感じるからといって、ゲーム理論を盾に、メンツ集めに奔走しても、TRPGは、解釈学論的な遊びであるからこそ、コミュニケーションが成り立たず、つまらない諍いを起こして終わることが多いのです。チェスとは大きく違うのはこの点です。
TRPGの勝利条件が、もし、TRPGで楽しいひと時を過ごすというものなら、メンツ集めのとき慎重に配慮することが最上の上達の近道です。
解釈学については、ハイデガーの立場を僕はとっています。
解釈学
解釈学的循環
mixiで「存在と時間」の読書会を開いています。
ハイデガーは『存在と時間』で存在論的解釈学により伝統的な形而上学(数学もゲーム理論も含みます)の解体を行いました。
形而上学はものの上から、ものそのものでなく相対化したり抽象化して見直してみよう、という学問ですが、これの解体です。
数学は数字の法則や使い方を学びますが、メタ数学もあります。数学的に言うと「数学は数学の正しさを証明できるか?」と問います。ゲーデルの「不完全性定理」では「数学は数学の正しさを証明できない」としました。
ノイマンは「不完全性定理」の第一の理解者です。ノイマンはゲーム理論の創始者ですが、Wikiにあるとおり、ゲーム理論史上最大の功績とされるナッシュの均衡論に、「くだらない、不動点定理の応用ではないか」と貶めたとあります。
こちらの本の著者の新田先生は母校での恩師です。
解釈学的遊びとして
解釈学論的なアプローチを実践するには、「関係」「変化」「解釈」の三部構成を用いて、アウトプットとして、PLがPCを考慮したあり方で、ロールプレイ、つまり、逆に「解釈」「変化」「関係」の流れを滑り込ませます。これが、「意志決定」ではなく、解釈学論的なアプローチです。
もし、ゲーム理論上の合理的選択の結果を伝えるだけであれば、ロールプレイという手法自体を必要としません。シミュレーションゲームやチェスのように、ユニットや駒を動かせば良いだけです。
PCがキャラクターという駒である以上、キャラクターらしさを取ろうとしたとしたら、それはすでに、「意志決定」ではなく、解釈学論的なアプローチです。これは、駒を動かすテクノー的なデザインではなく、アルス的なデザインです。RPG上で必要な分だけキャラクターを造形するデザインと言い換えられます。
ある「関係」を如何に着目するか、どのように「変化」したかを着目したか、どのような「解釈」を導き出すのか、これらはPL固有のインスピレーションによるもので、PLの個性であり、アウトプットにいたっては、PCはPLの固有のもので、模倣はできないものと言えます。
PCを模倣したNPCは、PLから手放された「PCごっこ」で、公式なPCではありません。遊びを大切にしないイロニーの人のPCと、ほぼ大差がありません。
「葬式ごっこ」という「いじめ」がありました。ごっこ遊びに、悪意が仕掛けたものです。
そのごっこ上の子供は、自殺に追い込まれました。遊びの名を借りた、「いじめ」です。
RPGが、悪意を用いて成立可能であるのも、この事件によっても社会学的にありうる事象であると言えるのではないでしょうか。
ですから、PCのNPCとしての利用には、注意が必要です。PLに了解を得ることが一応、必要です。TRPGがその場限りとは限らないからです。
なにせ、「遊び=(社会的ルール上の)善」ではないのです。
遊びの善というのは、遊びに対する真面目な態度であり、イロニーの正反対の立場です。誰とも真面目に遊ぶことが遊びの善です。繰り返しますが、ルールがない遊びは存在しない、遊びはそれ自体の「遊びのルール」によって成り立つからです。その遊びの善は遊びの面白さを尺度とします。
「社会的ルール」よりも「遊びのルール」のカテゴリは小さいはずです。それが逆転する現象は、遊びの危険、誘惑、堕落、現実逃避、狂気と呼べるでしょう。
察するに、多くの論者が遭遇した面白くないTRPGは、結局、この逸脱を指していただけではないでしょうか。
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