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GameDesign 西部劇TRPG開発日誌

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[GUN]意外と知らない銃の真実

意外と知らない銃の真実

小林 宏明【著】

人気FPS&サバゲーの定番モデルも真相解明!本当は違うの!?銃に関するカン違いをこの1冊で徹底解説!

「BOOKデータベース」より

[目次]

  • 1 銃の「構造・仕組み」編(銃は軽い方が撃ちやすい!?
  • 引き金、撃鉄、撃針は、どれかひとつでも欠けると銃の役目を果たせなくなる!? ほか)
  • 2 銃の「開発・成り立ち」編(M16ライフルはベトナム戦争時にアメリカ軍が積極的に採用に踏み切った!?
  • AK‐47はドイツの突撃銃(StG44)をお手本にした!? ほか)
  • 3 銃の「弾薬・弾丸」編(マグナム弾を撃ち込まれると人は吹っ飛ぶ!?
  • 口径とは弾丸が飛び出す銃口の直径を測ったもの!? ほか)
  • 4 銃の「トリビア」編(リンカーン大統領を暗殺したのは、デリンジャーというとても小型の拳銃!?
  • リボルバーとピストルはちゃんと区別するべき!? ほか)

「BOOKデータベース」より


 定評のある小林宏明先生の本です。コンビニで入手しました。
 いわゆる、ふかしのミリタリーファンにきちんとした説明で、銃の実際を述べられています。TRPGで、ミリタリーファンのふかしは、なぜかわからないことを自分の浪漫として語ります。知らないことわからないことは、わかっているふりをせず、正直にわからないということが大切だと思います。
 珍説開陳しても間違いは間違いです。
 


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Vショウ・スタッフ参加2と昔の射撃


アメリカでデューク廣井氏が、黒色火薬銃の実射をレポートしたコンバット誌の記事を、アリゾナ生まれで日本在住の西部小説作家チャック・タイレール氏が、紹介しています。
こちら



 スタッフ参加してきました。スタッフは報酬やメリットは度外視で手弁当の心意気での参加が基本です。こうしたカルチャーを支えているという自負心しかないです。「楽しいイベントありがとうございました」とお礼を述べて下さった方がいました。個人的に嬉しいです。
 次回は来年の3月30日です。
 コンバットマガジンでDUKE廣井先生の記事が載っている号をVショウで購入しました。
 僕のTRPGにも監修(?)として参加して下さる予定です。

 ブログはこちら。http://officeduke.militaryblog.jp/

 僕は昔、歌舞伎町と西新宿で働いていたことがありまして歌舞伎町のエアライフル射場の常連でした。亡くなった伯父は北海道日高の鹿撃ちのガイドでした。
 ちょうどアップジョンなどが流行っていた頃の歌舞伎町で、「新宿鮫シリーズ」大沢在昌先生の描いている時代の頃です。

 ちなみにど素人が外国に行って現代銃を射場で撃ったとしても何の参考にもなりません。また、外国に行って人体や馬体をターゲットに出来るわけではありません。鹿や熊を撃ち殺しても何の参考にもなりません。
 ボウガン(弓)は馬鹿な僕の元父が畳を撃って遊んでいました。僕が子供の頃、元継母は薪割りの斧や包丁(マキリ)をしょっちゅう僕に投げつけていたので感覚はわかります。
 金属バットでの折檻が常習化していましたが、六本木の事件だと被害者が死んでしまったのを根拠に医者にも信じてもらえず、最近、尼崎市の沖野玉枝容疑者(43)事件で、やはりいると言うことが信じてもらえるようになりました。


 描写の正確さは、TRPGの場合、西部劇作品のそれぞれが舞台とする西部に沿えば良いのだと僕は思います。


エアライフルで実際射撃現象

 昔、新宿のエアライフル射撃場で撃ってきたものの成績です。
 銃を固定して目標を変えずに撃つと弾着は正規分布します。
 人間が撃つ場合その正確さは大きくばらつきます。この場合標本数が少ないのですが。
 狙ったところに完全に命中する数が驚くほど少なくなってしまいます。


半数必中界CEP



 銃を固定して多数弾を撃つとある半径に50%命中したとします。
 その半径に対する半径の割合がr/cepです。

 DUKE廣井先生によると自衛隊でも砲兵科で勉強しないと普通は知らないと驚かれました。


Vショウ・スタッフ参加

 第71回Vショースタッフ参加してきました。スタッフは報酬やメリットは度外視で手弁当の心意気での参加が基本です。こうしたカルチャーを支えているという自負心しかないです。前回、ディーラーさん(ジャンゴさん)に頼んでとっておいていただいた「The Guns of Remington」を購入しました。
 前回の値段より安く売って下さるお話がありましたが、値引き分はご祝儀としてお渡ししますと申し出たところ、オマケにピンバッジを頂いてしまいました。とっておいてくださったのが何より嬉しい。

 取扱説明書的な解説書は、オーナー用の物があるくらいです。この本も、そういったものではなく、生産品のヒストリカルなリストです。ただし、内容はフルカラーです。
 マカロニを含めても西部劇で扱われる銃はバリエーションが少ないのです。西部劇はガンマニア「だけ」の映画ではないからです。

 明日もVショー二日目が開催されます。


[TRPG]続「人物関係シナリオから」

 「人物関係シナリオから」という記事の続編です。

 記事にはシナリオ作成の限界はどこまでかを書いてあるだけです。きちんとそう書いてますしその列挙をしています。

 論理的思考や学問に疎いとかで、僕が突然3すくみの関係を用いようと言い出しておかしいと感じる方がいるようです。そういう方は読まないでください。

 調べると、心理学・社会学では3すくみの状態をいろいろ考察されています。典型的なのは、[T.M.ニューカムのA-B-XモデルとF.ハイダーのP-O-Xモデル]であらわされるように、3すくみを単純化して、考えることです。

#引用開始#
ABXモデル(ABX-model) ニューカムの提唱した認知的バランス理論の仮説モデル。ハイダーのPOXモデルに近いが、個人A,Bと、対象Xとの三者関係が不均衡状態にある場合、AB間にコミュニケーションによる相互作用が生じて均衡化に向かうとする点で、Pの認知構造の変化だけを問題にしたハイダーのモデルと異なっている。(社会学小辞典:有斐閣双書)
#引用ここまで#

#引用開始#
POXモデル(POX-model)ハイダーの提唱した認知的バランス理論の仮説モデル。ある人(P)が他のある人(O)を好意的に認知している場合、Pが好んでいる対象(X)をOも好んでいれば、三者(POX)関係は均衡状態にあるが、OがXを嫌っていたとするとPOXは不均衡状態になり、均衡化への動きがPの認知のなかに生じるといった風に、認知を均衡という観点から考察したモデル。(社会学小辞典:有斐閣双書)
#引用ここまで#


 さらに三すくみの状態とは違い、三つの選好順序の選択となると、アローの不可能性定理があります。こちらは経済学です。

#引用開始#
二人の個人1および2が三つの選択肢x,yおよびzだけから構成される最も単純な社会を考察してみればよい。(中略以下のα~ζは取り得る選好順序)
α:x,y,z β:xzy γ:yxz δ:yzx ε:zxy ζ:zyx

アローが社会厚生関数――最近の彼好みの用語法では社会構成関数――と呼ぶものは、個人の選好順序のプロファイルを一意的な社会的選好順序に移す関数である。これは個人の選好順序のプロファイルを社会的選好順序に集計するためのプロセスないしルールを表現する関数であると考えられる。別の表現をすれば、社会厚生関数はカルテシアン積Δ×Δで定義され、Δで値をとる写像である。ここでΔ={α,β,γ,δ,ε,ζ}である。したがって、我々が考察する最も単純な社会でさえ6の36乗個のアローの意味での社会厚生関数が存在していることになる。これは天文学的に巨大な数であって、およそ10の28乗に等しい。(社会的選択と厚生経済学ハンドブック)
#引用ここまで#



 よく意志決定がゲームであると書かれてありますが、もしTRPGのように多人数で社会的決定を行なうとすると、多数決上の(数学的な意味での)独裁者問題が発生します。
 討論主義できめようとすると、声の大きいプレイヤーがPC全員の意志を代表し、(数学的な意味での)独裁者になるのです。


 多様な選択肢からPvPを行なうならば、意志決定は反映されるでしょう。

 また、ストーリー的なシナリオに沿ったPC協力型のTRPGは、ゲームとしてどうなのかというと、さんざん述べているとおり面白いシークエンスを求めようという挑戦です。これもまた全員がコミットしていれば、パレート均衡(全員の一致)により意志決定は反映されるでしょう。

 考えることを三つに絞ろうというのは、もう一つ、心理学上、人間が立てられる仮説は3~4個までだからです。GMもPLも人間ですから限界があり、その限界以上のシナリオは作るべきではないということです。
 ただしイベント発生ごとに段階を踏んでいく方法ならこの問題は解決できます。戦闘システムがそうです。
 単純に3つの選好選択に絞ったとしてもアローの不可能性定理から、処理側のGMを含むかもしれない2人以上のプレイヤーで、きめ方の多様性は天文学的な数だけ担保されます。
 たったの3つで2人にとっては、自由という観念では自由が成立すると言って良いでしょう。もし、自由ではないというなら何通りあれば自由と言えるでしょう。


 シナリオ作成の限界には、GMとPLの関係性もあります。コンベンションのマスターでモビルスーツの出ない塹壕戦をするガンダムでは困りますが、ナカマ内では面白ければありになる場合もあります。

 そのナカマ内のもめ事の処理もまたシナリオ作成の限界です。


 「人物関係シナリオから」は

 シナリオ作成の限界はどこまでかを

 書いてあるだけです。


 そして可能なことはPLが楽しいことなら、

 やってみましょうというノウハウです。




「きめ方」の論理にはゲーム理論の展開ものせられています。高校生から分かるアローの不可能性定理は非常に参考になりました。




アローの不可能性定理 = Arrow's Impossibility Theorem : 枠組みの検討と応用可能性

松本保美 著

アローの不可能性定理の理論的枠組みの解説および解釈を基に、伝統的な枠組みをより現実的かつ一般的にする新しい考え方を提示する。

「BOOKデータベース」より

[目次]

  • 第1章 多数決と民主的意思決定
  • 第2章 選択関数とその性質
  • 第3章 アローの不可能性定理
  • 第4章 プロファイル付き集合値選択関数を用いたアロー型不可能性定理
  • 第5章 基底関係的集団的選択
  • 第6章 κ‐集合前提の集団的選択
  • 第7章 顕示選好的集団的選択
  • 第8章 アローの不可能性定理と非合理的個人選好
  • 第9章 アロー問題の意味
  • 第10章 個人選好の基準-西欧対日本
  • 第11章 非論理的個人選好と集団的選択
  • 第12章 多次元集団的選択理論

「BOOKデータベース」より


社会的選択理論 : 集団の意思決定と個人の判断の分析枠組み

ジョン・クラーヴェン 著 ; 富山慶典, 金井雅之 訳

政治学や経済学、哲学・倫理学の中に、アローの定理にはじまる社会的選択理論の居場所を与える。選挙制度や経済政策の決定手続き、権利や正義の道徳的判断など、主要トピックスを幅広く簡潔にまとめた入門書。

「BOOKデータベース」より

[目次]

  • 第1章 序論
  • 第2章 選好と選択
  • 第3章 Arrowの定理
  • 第4章 集合的合理性
  • 第5章 選択ルールの戦略的操作
  • 第6章 多数決投票を救出すること
  • 第7章 権利
  • 第8章 正義
  • 第9章 功利主義的判断

「BOOKデータベース」より


[TRPG]ポーカーをTRPGでプレイするミニゲーム(2)

 TRPGでゲーム内のゲーム(ポーカー)をプレイする場合、プレイヤーとキャラクターのツキは違いますので、このような工夫をしました。2011年06月21日 08:18にmixiでは既に公開していました。アナログのパズルゲームです。

 まずマグネットがつくボードを2枚用意します。このようなものです。TRPGではよく見かけるホワイトボードを兼ねたものでいいと思います。




 データはA4なので、より大きいA3もいいかと思います。






 次に、プリンタで印刷できるタイプのマグネットシートを用意します。枚数が少ない方がリーズナブルですが4枚入りで磁力もありすぎないこちらを用意します。開封時に外袋のノリ部分がくっつかないように注意して下さい。



   PokerPuzzleCardKoma

 をマグネットシートに2枚プリントします。ハサミで簡単に切れる厚さですので、正方形のトランプコマを切りわけます。競うために、正方形のカード駒を2セット作ります。

 次はOHPシートです。レーザープリンタならこちらがいいと思います。インクジェットではダメです。↓


 インクジェットでは、絶対に対応のOHPシートがベストでしょう。↓



 こちらには、PokerPuzzleMeganeをOHPシートに2枚印刷します。単なる紙でも穴を開ければ出来ますが、透明出ない場合、セレクトするための情報が少なくなりプレイ時間が長くなるためです。
 以上の手順で、ポーカーのパズル化が出来ます。





 上図では、青いマス五個分の所に、フォーカードのカードのコマが見えています。このようにOHPシートを回転させたり裏返しして役を作ります。
 ルールは、ジョーカーを除いた四種類のスーツの正方形コマ、A、2、3,~Q、Kの52枚を上図のように四隅の角を3駒ずつ除いた13×4=52枚を8×8-3×4=64-12=52枚として配置して、出題しあい時間制限などを付けて出します。あらかじめ最高位の役を決めて出題することが出来ます。空白のマスが生じる役は認めません。


 出題は同じでもストレートを見つけられました。

 こちらも出題は同じでもロイヤルストレートフラッシュが隠れていました。先にこちらを見つけてしまったら、フォーカードを探そうとは思わないかも知れません。

 つまり、キャラクターのツキを呼び込むのがパズルの高い役を呼び込み、幅を広げます。プレイヤーはパズルを解く側となって高い役を探せるかどうかを競うことになります。

 これによってTRPGでGMの無限資産によるポーカーを楽しみ、プレイすることができるようにしました。ぼくの創作のミニゲームを一部公開しました。これで、パズルが流行っているなか、著作権をきちんと主張できます。

 携帯デバイス用の物も開発中です。
 (追記)アナログで遊ぶセットをコミケで少部数頒布しました。好評で嬉しかったです。

 著作権はこのブログを含めてこのミニゲームも放棄していません。


[TRPG]ポーカーをTRPGでプレイするミニゲーム(1)

 同内容の記事を加筆しました。こちらです。

 これは、TRPG内で、使い捨てタイプのNPCがPCとポーカーをしたとします。
 大昔にT&Tでやったところ、PCが良い役を持っているのにかかわらず、天井分を賭けられるとPC(PL)はおりてしまう現象が起きたのです。
 当時は幸運度に合わせて、セブンスタッドにして差を付けたり、さんざん工夫しましたが、ダメでした。
 つまり、「幸運度」なり「ギャンブル」のPCの能力や技能と、GMの無限資産では勝負にならないのが問題でした。GMは、やろうと思えば無限資産で簡単に(資金的に)PCを潰すことが出来ます。これを解決しました。

 僕が問題としていたメタゲームはこちらの次元です。

 「PCの運」と「PLの運」は違っていて、「GMがもつ運」と「NPCの運」もちがいます。あたりまえですね。

 PCたちが主人公でその資金がゲームの本筋になるのであって、GMのNPCたちが無限に資金を持っていることは本筋と全く無関係でしょう。ですからこうしたギミックが必要になると僕は考えたのです。

 これで、「マーヴェリック」(映画はTVドラマのリメイクです)のようなロールプレイ(NPCもPCもわざと負けを込んだり決定的に天井を吊り上げて勝ったりする再演性の演技など)も出来るようになります。

 このミニゲームでPL(PC)が一生懸命に勝つことだけが目標ではなくなります。繰り返し言いますが、これでロールプレイ(勝敗のないSecond-guessing)ができるわけです。ポーカーのショウダウンのときに普通に配られたトランプのカードは変えられませんからロールプレイが入り込む余地がないのです。

 ほかのポーカーが存在する世界を扱うTRPGにも汎用としてこのミニゲームは使えるでしょう。

 この問題は実際にTRPGでポーカーを登場させたことがない方にはわからないと思います。実際にTRPGをプレイされる方なら、この問題をクリアできたことがわかると思います。


[TRPG]社会的選択と個人的評価(ケネス・アロー)

アローの不可能性定理


社会的選択と個人的評価

ケネス・J・アロー 著 ; 長名寛明 訳

社会的選択理論を創設したアローの類まれなる業績の最新版。

「BOOKデータベース」より

[目次]

  • 第1章 序論
  • 第2章 選好と選択の性質
  • 第3章 社会的厚生関数
  • 第4章 補償原理
  • 第5章 社会的厚生関数の一般可能性定理
  • 第6章 個人主義的仮定
  • 第7章 社会的厚生判断の基礎としての類似性
  • 第8章 社会的選択の理論に関する覚書き-1963年

「BOOKデータベース」より



社会的選択と厚生経済学ハンドブック

Kenneth J.Arrow, Amartya K.Sen, Kotaro Suzumura [編] ; 鈴村興太郎, 須賀晃一, 中村慎助, 廣川みどり 監訳

このハンドブックの主な目的は、社会的選択の理論と厚生経済学の現状に関して、親しみやすいイントロダクションを提供することである。本書で解説される理論は、人間の福祉の改善方法を追求したり、集団的意思決定を容易にする上で、強力で建設的なメッセージをもっていることをも確信しているのである。

「BOOKデータベース」より

[目次]

  • 1 アローの不可能性定理(アロー型不可能性定理
  • アロー型投票スキームの諸類型 ほか)
  • 2 投票スキームとメカニズム(投票手続き
  • 遂行理論 ほか)
  • 3 社会的選択ルールの構造(集団的意思決定の順位付けルール
  • 委員会投票についてのゲーム論的分析 ほか)
  • 4 厚生、正義および貧困(社会厚生汎関数と個人間比較可能性
  • 功利主義と正義の理論 ほか)

「BOOKデータベース」より


 僕は頭が良くないので、ノーベル賞を取った理論に、たちうちできません。wikiによると、アローの不可能性定理とありまして、協調型ゲームの理論で互いを互いにコミットする(多数決)ことが上手くいかないという原理らしいです。
 TRPGでは、選好順序が多数決では成り立たず、「完全に全員の好み」であるようなセッションはつくることが出来ないという証明です。


[TRPG]「物語の命題」を読んで。

物語の命題 : 6つのテーマでつくるストーリー講座

大塚英志 著

『鉄腕アトム』『トーマの心臓』『11人いる!』『借りぐらしのアリエッティ』…。まんがやアニメ、映画の名作たちの物語の中には、なぜか必ず共通する要素が発見できる。それら"物語の命題"と言うべき存在を解き明かし、まったく新しい作品としてリメイクしていくワークショップ集。

「BOOKデータベース」より

[目次]

  • 序 「テーマから物語をつくる」という普通の方法
  • 第1章 人造人間に生まれて-「アトムの命題」
  • 第2章 ギムナジウムの転校生-「エーリクの命題」
  • 第3章 水蛭子の語られなかった運命-「百鬼丸の命題」
  • 第4章 私は急いで大人になる-「ジェニーの命題」
  • 第5章 君のためなら「女の子」になってもいいよ-「フロルの命題」
  • 第6章 いつかトトロにさよならを-「アリエッティの命題」

「BOOKデータベース」より


 批評から、物語の「命題(テーマ、プレミス)」を抜き出して、それをワークショップ(練習問題)として提示する構成の本です。



 しかしそのようなぼくの創作論の中でさえ手つかずになっていたのが「テーマ」という問題です。それはぼくの中でどこかでテーマを神聖不可侵なものとして、つまり、「作者」の固有性の拠り処として担保してしまったのかも知れません。
(中略)
本書は、こういう思い込みを思い切って捨ててみることにしたワークショップの記録です。つまりあらかじめ用意された「テーマ」に従って物語る、ということをぼくの学生たちに求めたのです。困ったことに、そして予想通りに、あらかじめ「テーマ」に従って書かれた物語はしかし、かなり「おもしろい」のです。

(中略)本書でぼくが「命題」を引き出すプロセスそのものは「批評」であり、そして「批評」だけを読んで一つの物語をわかった気になるほど愚かなことはないからです。ワークショップに参加した学生には実際に授業で一群の作品に直接触れた上で「命題」を示し、それに従って作品化をしてもらいました。そのプロセスはどうぞさぼらないでいただきたい、と思います。

 「キャラクターメーカー」「ストーリーメーカー」は、物語なりキャラクターを、構成・構造としてそぎ落として、特殊から一般への科学的な見方のアプローチをとられていましたが、この本は、そういう書き方はしていません。

 この本では、命題という普遍から単独にゆだねて、その単独性から、普遍の地平を渡る道しるべとなる創作論を採っています。
 僕は、コミュニケーションの社会学で扱われたような単独性と普遍性、作家性への応援として受け取っていいと思いました。

 人間は、既にある技術や道具があることも知らないで、一種の知的体系を作ろうとします。

 なんらかの物づくりのプロが取りそろえる道具の体系に対して、アマチュアや素人がそういった道具自体や道具体系の存在も知らないで、自分で揃えた道具の知的体系を作り出していることがあります。

 普遍的な命題を扱うために、一般的な体系を述べてきたとしても、物語のノウハウを道具的体系として述べたところで、単独性と普遍性は失われないと力説されています。
 文学的な単独性と普遍性、科学的合理的な特殊性と一般性のあいだに、断絶があって、そこをつなぎ渡る橋があると信じるとする、手のひらを返したような考えに希望と好感が持てました。

 物語から批評を通して、命題を見いだすプロセス、そこに単独性が生じているのです。
 浮世絵の歌麿の女性を描く微妙で繊細な艶っぽい曲線美が群を抜いているように、雲形定規では説明できない単独性を礼賛することができるのです。


 「キャラクターメーカー」の、「誰にでも創れる論」の限界がないように錯覚させる手品の種明かしとか、手品の種を知っていたとしても手品師にはなれないという感想とは違って、

 誰かには創れるというしっかりした根拠を示している

 と思いました。

 TRPGなら、なぜ、自分が作成していない、他人のものであるキャラクターを交代できないのかというと、ロールプレイにプレイヤーの個性の要点があるからと考えられるとしか思えません。
 ロールプレイには、Second-guessing(憶測しなおすこと)があるから、単独性が発揮されているのです。単なるペルソナではないメカニズム、一種の作家性が備わっているからだと僕は思います。