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GameDesign 西部劇TRPG開発日誌

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[つれづれ]「ファンタジーの文法」

 門倉直人『ローズ・トゥ・ロード』: 21世紀、SF評論で言及されている本です。この本は神秘的な面があって、論理的な構成ではありませんが、論理的な箇所は、要約すると哲学上の構造主義の先駆者とされるウラジミール・プロップの分析をベースに、ジャンニ・ロダーリが物語の創作方法に発展させ、教育について論じた本です。




ウラジミール・プロップの機能(ファンクション)カード

原則1 民話の恒常的で不変の要素は登場人物たちの機能である。この場合それぞれの機能がどんな人物によって、あるいはどんな方法によって為されるか、ということとは関係がない。
原則2 魔法民話の中に出てくる機能の数には限度がある。
眼即3 機能の継起順序は常に同一である。


 

すべての民話にすべての機能があらわれるわけではなく、筋運びで省略、併合、統合がされる。はじまりの機能は途中からという場合もある。抜かした経過を取り戻すために後戻りすることがある。機能にはその反対の場合を含むこともある。


 

プロップのカード レッジョ・エミーリアでの
ジャンニ・ロダーリのカード
(1)留守  
(2)禁止 (1)禁止
(3)違反 (2)違反
(4)捜索  
(5)密告  
(6)謀略  
(7)黙認  
(8)加害(もしくは欠如 (3)加害(もしくは欠如
(9)調停  
(10)主人公の同意  
(11)主人公の出発 (4)主人公の出発
  (5)任務
  (6)魔法の授与者との出会い
(12)魔法の授与者に試される主人公  
(13)主人公の反応  
(14)魔法の手段の提供  
  (7)魔法の贈り物
(15)主人公の移動  
  (8)敵対者の出現
  (9)敵対者の悪魔的能力
(16)主人公と敵対者との抗争  
(17)狙われる主人公 (10)決闘
(18)敵対者に対する勝利 (11)勝利
(19)発端の不幸または欠如の解消  
(20)主人公の帰還 (12)帰還
(21)追跡される主人公  
(22)主人公の救出  
(23)主人公が身分を隠して家に戻る (13)家への到着
(24)にせ主人公の主張 (14)ニセの主人公
(25)主人公に難題が課される  
(26)難題の実行 (15)困難な試練
  (16)損害の償い
(27)主人公が再確認される (17)主人公であることの再確認
(28)にせ主人公あるいは敵対者の仮面がはがれる (18)仮面をはがされたニセ主人公
(29)主人公の新たな変身  
(30)敵対者の処罰 (19)敵対者の処罰
(31)主人公の結婚 (20)結婚

ファンタジーの文法 : 物語創作法入門

ジャンニ・ロダーリ著 ; 窪田富男訳

物語はどこにでもある。眠っているだけ。目覚めさせるには「ファンタジー」を働かせればよい。でも、どうやって?著者はそのための数々の「技術」を治開する。それは同時に現代の教育に対する不信の表明であり、子どもたちの想像力を培い創造力を育むことこそ、これからの社会を作り出していくための必要条件であることを訴えている。

「BOOKデータベース」より

[目次]

  • 池に落ちた石
  • 「チャオ」ということば
  • ファンタジーの二項式
  • 「電灯」と「靴」
  • もし…なら、どうなるだろう
  • レーニンの租父
  • 任意の接頭辞
  • 創造的誤謬
  • 古いあそび
  • ジョズエ・カルドゥッチの有効性
  • 「五行戯詩」の構造
  • なぞなぞの構造
  • ごまかしのなぞなぞ〔ほか〕

「BOOKデータベース」より
 

 静的な構造のみによって対象を説明することに対する批判、つまりポスト構造主義につながる問題と同じく、この分析の哲学的な問題は、「解釈」の不在、という構造主義(一方で、アメリカ構造主義という別個の体系があり、生成文法もまた、批判にさらされています。)の提示する命題そのものです。もうひとつ、分かりやすく述べると、物語の(意味ではなくハイデッガー的な)意義が欠落した分析となっている点にあります。

 たとえば、このプラグマティズム的な教育方法が、「悪用」できることは、明らかです。子供の心を暴露し、サイコパスな心理を植えつけることも出来ます。「悪用」しない教育者だけが、教育者とも限らないでしょう。平和を教育すると争いを恐れて、自殺する従順な羊を生み出すことが出来たように。

 TRPGとして、この手法を取るならば、GM、PLそして、ゲームデザイナー、シナリオライターのそもそもの読者性と作家性を無力化・無効化させます。TRPGとして「物語上のブタ」と「参加者の不在」を発生させます。TRPGとしての遊びの崩壊を生み出し、遊ぶ余地のないものとなります。もし、この形式が成立する遊びの形式があるならば、それはTRPGとは別の遊びと言えるのかも知れません。

 2011.1.17追記

 実際にカードを用いて、複数の人間による共同作業で物語を作る実験をしました。「読者性と作家性を無力化・無効化」は、実験で簡単に実証できます。
 TRPGが悪意に弱いと言われていることと、かなり興味深い共通点が浮き彫りになります。


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