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TRPGをデザインするに当たって、一体、何がゲーム性かを考えてデザインしなくてはならないのは当然だと思います。
池波正太郎先生が、仰るところによれば、
「やれ、芸術でござい、なんでございと偉そうなことを言ってもね、自分が書いたもので金を貰って、それで暮らしているんですからね、これは商売なんですよ。
自分で書いたものを自費で出版して、ただで人に配ってというなら、これは何とでも好きなように言えばいい、芸術でございとかね。だけど金を貰って生活している以上は商売なんだから、客が喜ぶものでなくてはなりません。そうじゃありませんか。」
TRPGのユーザー(GM、PL)は、互いにお金のやり取りや商売をしていないのですから、彼らは彼らなりに、楽しめばいいのです。やれ、芸術でございとやってもいい。その場に観客がいるわけでもないので、内輪ネタのユーモア、パロディ、パスティーシュを発揮してもいい。
TRPGをデザインする立場は違います。
TRPGの開発は、単一の個人から生み出すことはどうしてもできなくて、テストプレイを必要とします。模倣や全く簡略したものならば、その必要はないかもしれません。しかし、TRPGに新しい試みを仕込むときには必ずテストプレイが必要になります。
そのテストプレイは協力してくれる方の時間と労力を奪い取ります。
いかにTRPGに対して愛情を持っているとしても、TRPGの新しい試みへの挑戦は多くの場合、徒労に終わりますから、犠牲者を出してしまうようなアイデアには協力は得られません。
そのためには、TRPGをデザインするにはある種の哲学、ゲーム性への見解が必要です。
人を説得できるゲーム性へのアプローチが分かりやすく説明できなければなりません。
私は、演技つまりロールプレイ(RP)のシークエンス(並び)を、いわば高い役に揃えることは、ストーリーの構築とゲーム性との間に矛盾のない親和性があると主張します。
ロールプレイの積み重ねにおいて良い並び、良いストーリーに揃えるのはゲーム性と何ら背反しないと思うのです。
ゲーム性というものは、TRPGのように勝負や儀礼の要素がなければ、遊びを指します。
本質的に遊びとはカラクリ(機械)のなかの隙間に遊ぶものです。
サルトルが世界劇場という説明をして、世界はペルソナを被って演技されているだけだから、そこから抜け出すという論法で自己実現を説きました。しかし、私は世界が演技だらけとは思わないです。
この世界がすべて問題解決で成り立っているような論法にも同意できないです。ひとは皆、狂気におかされたり、忘却されたり、死ぬことによって、自らの手で得たものをすべて失うという結末を分かっています。
遊びとは人生の真剣な張りつめた営みの隙間で、一種の幸運な遭遇によって生み出される営みです。
遊びとは、遊びであるという互いの了解的な笑顔つまり楽しみ合う心のもとに、機会を捉え、機知を駆使して、機運をつかみ、機微や機転を働かせるものだと思います。
勝負や儀礼の要素がないゲーム性は遊びの根底と一致しているのだと思います。
何がゲームを成り立たせているのか。この内訳は遊びを楽しみ合うという心が核心です。ネコやイヌであってもこれは同じです。
ですから、私がTRPGをデザインするに当たって第一のアプローチは、機会、機知、機運、機微、機転の余地を作ることによって、遊びを楽しみ合うという心を、一番大切にすることだと思っています。
これをゲーム(G)とすると、RP÷Gでは必ずG>0であってGが0では成り立ちようがない重要なことだと思います。
面白くて楽しいゲームを論じることには、ゲーム理論を持ち出したりするようなことより、重要なことになると思います。そして、TRPGの楽しさを伝えるヒントにもなると思います。
2011.5.27追記
遊びというコミュニケーションは、対人的なコミュニケーションとは別の様式のコミュニケーションだと思います。
芸術作品へのコミュニケーションが同じようにまた、対人的なコミュニケーションとは別の様式と考えれば、仮象論的二重性を論じることなく、説明ができますし、何よりも感覚的に納得出来ると思います。芸術作品を鑑賞する行為は、何も分裂したり、二重化された、倒錯ではないからです。
遊びも、分裂したり、二重化された、倒錯ではなく、人間的なコミュニケーションのうちの一形態だと考えられます。
ゲーム性の仮説(メモ)
「遊びの現象学」を読んで。
コベントリー・ジレンマ(Coventry Dilemma)
戦闘システム論からTRPGの物語論。
私のゲームを遊ぶメタ[個人メモ]
RP/Gとはなにか。